今後の印刷業界を引っ張っていくのは、同人誌かもしれない

印刷

同人誌市場がどんどん伸びている

同人誌が熱い。今年も、夏コミ(夏に行われるコミックマーケットのこと)が開催されるが、その規模たるや、不景気にあえいでいる印刷会社が見たら、目を丸くするだろう。
多種多様の同人誌が、何万冊も展示即売されているのだ。当然、それらを手がけている印刷会社は、さぞかし儲かっているのではないかと思う。かたや、そうした世界があることを知らない、または目を向けようとしない印刷会社は、同人誌印刷の恩恵に預かることなく、「不景気だ、不景気だ」と呪文のように繰り返すだけ。

コミックマーケットとは・・・

毎年8月(通例、8月15日頃の旧盆にかかる週末)と12月(通例、御用納め以降 – 大晦日)の年2回、東京国際展示場(東京ビッグサイト)で開催される。開催期間は現在では主に3日間。8月に開催されるものは「夏コミ」、12月に開催されるものは「冬コミ」と呼ばれる。2013年12月現在、開催回数は定期開催だけで85回を数える。

コミックマーケットは回を重ねるごとに大規模化し、それに伴い一般にもその存在が広く知られるようになった。2013年夏に行われた「コミックマーケット84」では東京ビッグサイトを3日間借り切った状態でサークル参加者数は約3万5000スペース、一般参加者数は59万人にも上った。

コミックマーケット - Wikipedia

出版不況が叫ばれる中、個人レベル、サークルレベルでの小規模な印刷がどんどん伸びている。そのほとんどが、オンデマンド印刷機による少部数印刷だ。

データを自分で作って、オンデマンド印刷機で印刷(外注)するだけで、自分たちの同人誌が簡単に作れる。これは、出版が従来の流通経路を通ることなく、個人レベルに降りてきているということであり、今後益々伸びていくのではないかと思う。

同人誌の問題点1 二次創作

非常な勢いで伸びている同人誌であるが、様々な問題を抱えているのも事実。
代表的なのが、「著作権の問題」と、「成人向け同人誌」の問題だ。

同人誌といえば、趣味を同じくする同人が、自分たちのオリジナル作品を発表する手段だった。一昔前は、完全なオリジナル作品がほとんどだったのが、現在ではその大半が「二次創作物」と呼ばれるものだ。

二次創作物(にじそうさくぶつ)とは、原典となる創作物(以下、「原作」という)に登場するキャラクターを利用して、二次的に創作された、独自のストーリーの漫画、小説、フィギュアやポスター、カードなどの派生作品を指す。原作の媒体は、小説や漫画、アニメ、映画など多岐にわたる。主として同人誌の分野において1990年代後半から[要出典]使用されている用語であり、著作権法上の用語である二次的著作物とは異なる。

二次創作物 - Wikipedia

現在の同人誌は、二次創作が非常に多いのだが、大半は著作者が見て見ぬふりをしている(公に認めている場合もある)。
二次創作の同人誌が売れ、人気がでると、オリジナルの作品も注目を集めるという副次的効果があるのだ。
また、二次創作の数が多すぎて、いちいち著作権者がチェックしきれないという実情もある。
著作権侵害は、親告罪であるので、著作権者が訴えない限りは「見逃される」のだ。

というわけで、同人誌の著作権は、常にグレーゾーンという問題が立ちはだかる。
筆者個人の意見とすれば、完全にオリジナルのほうがもちろん良いに決まっている。
しかし、パロディーというのも、立派なサブカルチャーとして成り立っているわけで、原作のキャラクターのイメージを著しく毀損したり、公序良俗に反するもので無い限りは、多少目をつぶらざるを得ないのが、現状だろう。

同人誌の問題点1 成人向け表現

これも、同人誌についてまわる問題だ。
現在の同人誌は、成人向けに描かれたものが非常に多い。以前、成人向け同人誌のモザイク処理や墨消し処理が甘すぎるという理由で、ある同人誌の出版社が告訴されたことがあった。

こうした問題から、性器の露骨な表現については、自粛の動きが強まっている。
同人誌だから、どんな表現でもいいや、では社会的な責任を果たせないのはもちろんだ。
これは、一般に流通している成人向け雑誌でも同様で、同人誌は一般向け成人誌の表現に準ずるようにしている。

同人誌の持つ可能性

このように、様々な問題を抱えながらも、同人誌市場は年々伸びてきている。
同人誌の市場規模は700億円とも言われ、コミックマーケットの大盛況ぶりを見ると、これからの印刷市場の重要な一翼を担うのは、同人誌だと改めて認識させられる。

印刷物にとどまらず、ネットでは電子書籍の販売など、1つのコンテンツが様々な媒体で流通されている。
個人やサークルが、自分たちの作品を世に出すのが、非常に簡単に、敷居が低くなっているのだ。

様々な問題を内包しつつも、ものすごいエネルギーを感じる市場だ。