今話題の「オムニチャネル」とは?

ビジネス全般

「オムニチャネル」という言葉をよく聞く。
オムニチャネルとは、実店舗とオンラインストア(ECショップ)などの、あらゆる販売チャネルや流通チャネルを1つに統合して、どんな販売チャネルでも販売できる仕組みのことだ。

オムニチャネルがもたらすメリット

従来は、実店舗とECショップの間で顧客情報をバラバラに管理していたり、在庫状況の管理が別々であったりと、消費者にとって、同じ会社なのに実店舗とECショップでは、まるで別々の会社のようなものだった。

それが、オムニチャネル化すると、実店舗とECショップの垣根が無くなるというわけだ。
具体的には、実店舗に在庫がなかった場合、店員が持っているモバイル機器で在庫の有無を調べ、その場でECショップから注文でき、自宅に届けてくれるようになる。

また、ECショップから注文して、実店舗で受け取ったり、自宅近くの店舗で商品を受け取ることができる。ポイントカードも、実店舗とECショップで共通して使える。など、消費者にとっても非常に便利だ。

オムニチャネルは、イオンやセブン&アイ・ホールディングズ、トイザらスなどが特に力を入れており、トイザらスでは育児・出産に役立つ情報を紹介する「ドバイザリーページ」をECショップのコンテンツとして開設。
妊娠中や育児中の母親に役立つアドバイスをしている。
これは実店舗で店員が行っているアドバイスであり、そのコンテンツをECサイト内でも活用したということだ。

店員のアドバイスまで、ECショップで共有できるとは、単なる品揃えの共通化や流通の統合だけにとどまらない可能性を感じさせる。

消費者にとっては、実店舗でもECショップでも、同じ購入体験ができる。
購入まで至らない客(潜在顧客)は、実店舗で商品をじっくり見て、検討し、店員が持っているモバイル端末で他店の価格も調査でき、自宅のECショップでも豊富な情報が掲載されているので、さらにじっくり検討できる。

つまり、潜在顧客を取りこぼすことなく、情報提供やアドバイスを行うことで見込み客に育て、実店舗やECショップで買っていただくまでのステップを、販売チャネル関係なしにできるということ。

これは、店側にとっても、非常なメリットだ。

背景には、ショールーミングへの危機感が

大手販売店がオムニチャネルを推し進める理由は、顧客の囲い込みや消費者へのサービスのほかに、強力な外敵の存在が見逃せない。
それは、「ショールーミング」と呼ばれるものだ。

近年、実店舗では実物の商品を見るだけで、実際にはアマゾンなどのECで購入するという「ショールーミング」が進んでおり、デパートや家電量販店などの小売店では対応に苦慮している。

実際に筆者も、家電店で実物の商品を見て、触って、店員に説明を聞いて、価格を調べてから、スマホでアマゾンから購入するという、なんとも卑怯(?)な方法でものを買ったことがある。

これは店側にしたら、たまったものではない。
「ウチは、アマゾンのショールームではない!」と思うのも、無理は無いだろう。

顧客は、特に高額商品の場合、実際に見て、触って、じっくり検討してから買いたいものだ。
そうすると、やはり実店舗に足を運ぶ。でも実際に購入するのはアマゾンでは、やりきれない。
顧客の購買行動を、自店内で完結してもらうための、オムニチャネルというわけだ。

スマホ・タブレットがもたらすオムニチャネル

もうひとつの背景が、顧客の購買行動の劇的な変化だ。
一昔前なら、実店舗でモノを買うのが当たり前であり、それ以外の選択肢がなかった。

しかし、今や誰もがスマホやタブレットを使ってECショップから購入する。アマゾンへ行けば、大抵のものは揃うし、安く買える。そうなると、実店舗で購入するメリットが少なくなる。

今や、店舗は顧客の手の中の小さな画面にあるのだ。

それを阻止し、自店内で購買行動が完結できるようにするのが、オムニチャネルというものだろう。