地域商品券の電子化に思う

ビジネス全般

地方活性化のための一つの手段として、「プレミアム付き商品券」を発行している自治体が多い。
古くは1999年に発行された地域振興券がその始まりだと記憶しているが、どうだろう。

※プレミアム付き商品券とは
「プレミアム付き商品券」とは、発行自治体がプレミアム分を上乗せすることにより、消費者は額面よりもお得に購入できる商品券です。商品券は発行する自治体の加盟店などで利用できます。

例えば、1セット額面12,000円分の商品券が10,000円で購入でき(プレミアム率20%)、消費者は2,000円もお得に買い物をすることができます。2015年度の国の経済対策として人気を集め、2016年度以降も独自に発行する自治体も増えています。

引用:https://travelersnavi.com/coupon/premiumticket

商品券=印刷物という従来の概念

商品券は金券であるので、簡単に複製できない工夫が必要になる。
商品券にホログラム加工を施すのが多いようだが、偽造防止の印刷技術というのは他にもあって、例えば蛍光インキを使って彩紋パターンを印刷する、透明インキを使うなどがある。

これらは専門の加工機械がないとできないものなので、おいそれと一般の人が偽造できない。
印刷会社でも、金券に強く実績のある会社があるので、そうした会社では他の印刷会社の下請けをするケースが多い。

地方自治体が商品券を発行する場合、地元印刷会社へ依頼することが多いのだが、そこから下請けの印刷会社へ仕事を回すというケースになるだろう。

いずれにしても、地域振興のための商品券は、すなわち地元印刷会社の仕事を創出し、印刷会社の活性化にも一役買っていた、というわけだ。

ところが「商品券=印刷」という流れが大きく変わってきている。
端的に言えば、印刷会社の仕事がなくなっているのだ。

地域商品券の電子化

長崎県は、平成25年4月に県内の離島で利用できる「しまとく通貨」という地域商品券を発行した。
長崎県は離島が多いので、複数の島で利用できる商品券として人気になった。

そして平成28年に、しまとく通貨が電子化されたのだ。
もともと「しまとく通貨」は離島の人口減、観光客減少に対して、島をPRして人を集めようという意図で始まった。
徐々に口コミで広がりを見せ、加盟店での利用額が104億円を超えるという成功を収めた。
観光客の増加にも大きく貢献し、まさに地域の活性化に役立ったわけだ。

しかしその反面、販売窓口に観光客がまとめて押し寄せ、購入に時間がかかったり、17時以降には商品券を買えなかったりという問題点が。

さらに店舗側でも紙に裏書きをしたり、商工会での手続きが煩雑であったりと、こちらも問題を抱えることになった。

そこで県が踏み切ったのが、商品券の電子化というわけだ。

商品券電子化のメリット

商品券を電子化したメリットはかなり大きなものがあったようだ。
特に印刷費、在庫管理費、運送費が一切かからなくなったということ。
まさに電子化の一番のメリットだろう。

反面、今まで商品券の印刷で潤っていた印刷会社の仕事が、ゼロになったということだ。
徐々に減少するのではなく、一気にゼロになってしまった。
印刷会社にとっては死活問題になることもある。

さらに電子化された商品券は、顧客がどこで買い物をして、どこに移動しているかなどのデータを蓄積できる。こうしたデータが、次の地域振興、観光振興のヒントになるわけだ。

無駄な印刷費もいらない、在庫を抱える必要がない、配送の手間も費用もいらない、おまけに環境に優しい。
まさに電子化することのメリットは、大きいと言わざるを得ないだろう。

印刷が不要になるもの

このように、商品券はどんどん電子化が加速するだろう。
つまり、印刷需要がなくなるという、印刷会社にとって非常に怖い話だ。

ただ、電子化の方が紙の印刷よりもはるかにメリットが大きいとなれば、電子化に向かうのは時代の必然だ。
他にも、今後印刷が不要となるものが多くなってくるだろう。

例えば地図は、もはや印刷物としての使命が終わりを迎えているような気がする。
もちろん、観光に特化された観光マップなどは今後も生き残るだろう。
しかし、情報の書き換えに多大な時間とコストがかかることを考えると、Googleマップなどの電子地図の方が使い勝手が良い。

商品券だけでなく、コンサートのチケットなども電子化が増えていくだろう。
年賀状もメールやSNSでの挨拶に置きかわりつつある。
新聞折込チラシも、そもそも新聞の購読者が減っているので、効果が薄くなってきている。

商品マニュアルなども電子化が進んでいるし、カタログも同様だ。
印刷物でないとダメなものが、どんどん少なくなってきている。

こうした中で、印刷会社がどう対応して生き残っていくのか。
紙に印刷することでメリットの大きいものは何か。
時代の動きに即応して自らを変えていく努力が、今後ますます必要になってくるだろう。