紙の地図、そのメリットとデメリット

印刷

地図を作る仕事を何回かしたことがある。あれほどしんどく、気の使う仕事はないと思う。
よくやったのは、役場が発行するパンフレットに掲載する地図だ。製作段階で最新の情報を集め、Illustratorでコツコツと作っていくわけだが、大規模な地図になると、レイヤーの数は数十にもなり、データが非常に重くなるので、非常に大変な仕事だ。

印刷物の地図。そのメリットとは

さて、そんな大変な思いをして作成し、印刷した地図だが、新しい道や店舗ができるとたちまちその地図は古いものとなる。筆者が考える印刷物の地図のメリットは、

  • 一覧性に優れる
  • 専門性のある地図が作れる

の2点だ。

1.の一覧性は、印刷物の地図は4つ折り、8つ折り、16折りになっているものがおおく、バーっと広げて見ることができる。これは大きなメリットだ。●●から▲▲へのルートを探すのには、大きい地図のほうが便利極まりない。これが、スマホの地図だと画面サイズが小さいので、一覧性に劣る。カーナビでも同様だ。

2.の専門性については、例えば防災専用の地図とか、水道専用の地図とか、用途に合わせて専門性のある地図が作れるということだ。特に、役場が発行している地図は専門性の高い物が多く、逆に言うと汎用性がない。汎用性というのは商売上非常に大事で、スマホアプリの地図では、汎用性はあるが「水道施設を探したい」などの専門的なニーズに応えることはできない。

そうしたことから、まだまだ印刷物としての地図は生き残れる余地があるんじゃないかと思うのだが・・・・

 これから地図の主役は、デジタルデータに

地図に一番大事なもの。それは「鮮度」だ。
数年前に買ったカーナビを更新しないままでいると、新しい道が表示されず、画面上では道無き道を突き進んでいる、そんな体験をした方も多いはず。

常に新しい情報を更新し、最新の鮮度を保つことが地図には求められる。しかし、印刷物の場合は不可能に近い。
旅行雑誌に掲載されている地図でも、発行時にしか更新されないので、地図の鮮度をつねに保っているかというと、そうでもない。

そうした意味では、デジタルデータとして配信されると地図が、もっとも機能的に地図としての役割を果たしている。
デジタルデータ地図のメリットは、以下のとおりだ。

  • 常に最新情報が反映される
  • 目的の場所をすぐに検索できる
  • ルート案内など、様々な付加価値を付けられる

上記は、印刷物としての地図はまったく太刀打ちできない。

実際、スマホで簡単に地図が見られ、カーナビアプリで簡単にルート検索ができる時代、「もう紙の地図はいらないんじゃないか」と思うことが多いのだ。

また、ハードディスクに地図データを格納するカーナビも、時代に淘汰されていくように思う。
地図データを更新できることはできるのだが、はっきり言って面倒くさい。
筆者のカーナビも、2年以上更新していない。
となると、地図の鮮度という意味では印刷物と同じなのだ。

やはりこれからは、グーグルマップのようオンラインで常に情報が更新されていく地図。目的の場所をサッと検索でき、ルート案内や電車の乗換、乗り換え運賃、目的地までの距離、時間などがすぐに検索できる地図。これが、一番重宝される地図だ。

アップルも、carplayというサービスで、iPhoneをカーナビの画面に表示させるようになっている。
各カーメーカーも、carplayに続々対応している。そうなると、常に最新の地図データがカーナビでも使えるわけだ。
ユーザーは「更新」という面倒くさい作業をせずとも、最新の地図が手に入る。

例えば役所から「地図を作りたい」という要望を頂いた時、「なぜ紙の地図を作るのだろう」と単純に思ってしまうわけだが、デジタル端末を使いこなせない住民もいるわけで、公平性という点では、紙が一番良いのだろう。

しかし、これからの時代、紙の地図への需要は益々少なくなっていくのは確かだと思う。圧倒的にデジタル地図のほうが便利なのだから。