地図記号の変更について。外国人観光客への対応。「卍」はどうなる?

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日本を訪れる外国人観光客が年々増えています。
最近、流行り言葉のように「インバウンド」とか「爆買い」という言葉がメディアを賑わせています。

地図記号をなぜ変更するの?

日本政府観光局の統計によれば、2016年2月の訪日外国人の数は189万1千人となり、2015年の138万6千人から大きく伸びています。

2020年に東京オリンピックを控えていることもあり、この動きはますます加速するでしょう。
そんな中、ニュースでよく耳にするのが「地図記号の変更」です。

地図記号は国土地理院が策定するものですが、従来の地図記号だと訪日外国人が分かりにくい、間違いやすいという理由から、ユニバーサルピクトグラムとして外国人にも分かりやすい地図記号に変更しようしようじゃないか、という考え方で変更案が検討されています。

2016年3月30日の発表によれば、「外国人にわかりやすい地図を作成するための標準として、地図に記載する地名等の英語表記ルール及び外国人向け地図記号15種類を決定し・・・」とあり、今後地方公共団体や民間の地図会社にも周知していくとのことです。

2016年3月に決定された新しい地図記号。卍はどうなる?

今回決定された地図記号は、以下のとおりです。(クリックで拡大します)

地図記号

出典:国土地理院 http://www.gsi.go.jp/common/000138868.pdf

 

郵便局は手紙の記号に、交番は警察官の記号にと、それぞれ変更になっています。
ここで注目したいのが、今回策定された中に寺院の記号である卍が入っていないことです。

当初、卍は外国人観光客に馴染みがなく、分かりにくいとのことで、三重塔の記号に変更することが検討されていました。
その他、ヨーロッパの人にとっては嫌な記憶を想起させるという理由もあったのでしょう。

しかし、パブリックコメントの意見を集めた結果、「寺院の地図記号として卍記号を尊重すべき」、「卍記号の由来等を説明し、外国人に理解してもらうべき」、「従来記号の卍と外国人向け記号の三重の塔との2つの記号が存在すると混乱する」ということから、今回は決定が見送られました。

卍の由来について

そもそも、卍はヒンドゥー教や仏教で用いられる、吉祥の印として昔から用いられてきました。最も古い卍は新石器時代のインドで見られたとか。

日本では奈良時代の薬師寺本尊である中尊の薬師如来の掌と足の裏に描かれたものが現存最古の例とされ、非常に古い歴史があります。

卍が地図記号として用いられたのは、明治13年からになりますので、日本人なら誰もが知っている記号です。

今回は、卍の地図記号を変更しないことになりました。

変更された地図記号を覚える努力を

外国人観光客が増えているからといって、すべて外国人に合わせる必要はなく、卍記号にしてもしっかりと、その由来と使っている意味を説明し、分かってもらおうとすることも大事です。

外国人観光客は日本に何を求めているか?
それは、自分たちが知らない文化への好奇心じゃないでしょうか。
日本らしさをより分かってもらうためには、こうした歴史ある記号はそのまま残すべきだと思います。

とはいえ、分かりやすさとのバランスは必要なことです。
今回策定された地図記号の変更は、これから作成・発行される地図に反映されていきますし、学校の教科書や授業でも習っていきます。

我々大人も、新しい地図記号をしっかり覚えておかないと、「外国人が分かるのに、日本人は分からない」という、とても恥ずかしい事態になってしまいます。

しっかりと、新しい地図記号を覚えないといけません。