論文の構成

 論文は、読者に対して、ある研究テーマにおける課題とその成果である新しい理論について、具体的かつ明快な根拠を幅広く明示しながら、首尾一貫しての論理的な展開、いわゆる「論理の鎖」で全体が繋がっているように記載しなければなりません。

 そこで、論文は、以下のように章立てて構成するのが一般的です。

必ずこの形という訳ではありません。各章(パート・セクション)の分け方や名称も様々ですし、学問の分野や発表する媒体によっても異なります。ただし、名称や分け方が変われど、基本的なまとめ方のポイントは殆ど変りませんので、あくまでも一般的な構成要素の例として紹介いたします。
(「全体のアウトラインを描くことなく何となくで書き始めること」だけは最も避けたいところです。)

1.「論文の題名(タイトル)/研究者名/所属名」

 研究内容が理解しやすいような適切なタイトルを付します。また、研究者の実名(場合によってはアルファベット表記も併記)、所属も記します。タイトルをつける際のポイントは、「論文全体の要約を更に要約した言葉」にすることで、究極的には「題名だけで読者が研究内容を理解できる」のがベストです。

2.「要約」

 研究内容の概略を記しますが、ここが重要です。この要約次第では内容を読んで貰えない可能性すらありますので、どのような問題に対する研究か、これまでの先行研究ではどうだったものか、どのような手続きを経て、どのような結論に至るのか、これらを過不足なく適切にまとめます。ポイントは、客観的に論旨のみを記述し、「研究をはじめた個人的な動機や経緯」などに触れないことです。

3.「序論」

 研究の目的や意義、背景などを書きますが、一言でいえば「研究の課題」です。もっと分かりやすくいえば「問題提起」にあたります。そして研究成果がどのような問題解決をもたらすのか、研究成果の位置づけや重要性を記します。ポイントは、「現実に解決すべき問題」と「研究で解明すべき問題」を区別し、論点を明確にすると共に前者を混同させないことです。

4.「準備」

 論ずる対象についての予備知識、「本題に入る前に必要な最低限の基礎知識・情報の提示」になります。言い換えると、対象について先行研究ではどのように言われてきたのか、「先行研究の誤りや欠点などの批判」を行い、自分の論ずる研究内容・結論を理解してもらう為の導入部となります。ポイントは、「裏付けのない一般論に触れないこと」「意見の詳述をしないこと」です。

5.「本論」

 いよいよ研究内容になります。先行研究の批判と共に提起した問題の解決策として、自分が立てた「仮説」と、その立証方法にあたる「実験」「調査」などの「手続き」、そして「結果」について具体的に記します。ポイントは、データや結果はありのまま事実のみを記し、「解釈や考察を混ぜないこと」です。考察は、結論で述べるようにします。

6.「結論」

 本論のデータや結果を元に、仮説の成否や考察を叙述的に説明します。要約と一緒にならないように注意しましょう。ポイントは、①「序論」に対応する形になっていること、②仮想の論敵を想定して反駁・説得できるように論理的に積み上げること、です。また、自分が論じた新しい理論がその研究分野に対して寄与するところ、同分野の今後の課題等(補足ではない)も述べると、まとめやすくなります。

7.「謝辞」

 研究や論文作成において、指導・支援・助言など協力を頂いた方々に対する感謝の辞を述べます。謝辞をおろそかにする事は、論文の評価や形式云々といったこと以前に、まずは論者の姿勢として疑問を持たれかねません。お世話になった方々に対する感謝の気持ちを、必ず述べるようにします。
(※webで検索すれば沢山でてくると思いますので、近い内容のものを参考にすると良いでしょう)

8.「参考文献(引用文献)リスト」

 参照・引用した文献は、論文末に一覧で明記する必要があります。言語や分野によって、或いは和書と洋書などで多少書式が異なることもありますが、一般的には次のように表記し、著者名のアルファベット(または50音)順や、文献番号を対応させる場合は番号順に掲載します。
 ・「著者名(発行年)『著作名』発行所,ページ数」
 ・「著者名『著作名』発行所,発行年,ページ数」

(※文献にも様々なケースがありますので、引用の仕方や表記については、別項で紹介します)

9.「付録」

 研究過程におけるデータやプログラムは膨大な量になる事も多いですが、本論では論旨の記載に必要な最小限のデータにとどめ、その他の単純なデータ等は付録に回します。


 以上が、論文作成における主だった構成要素となります。
前述の通り、分野や機会によっては名称や分け方が異なることもありますので、実際には投稿先あるいは提出先の「仕様」「規定」「書式」の有無をチェックし、特になければ「慣例」に従いましょう。


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